世界脳週間2011京都講演会            ようこそ脳科学の最先端へ 

 

開催趣旨:脳科学は21世紀自然科学の柱の一つです.脳科学の重要性,脳研究のおもしろさを伝えるイベントが世界脳週間として全世界で行われます.日本の各地でも世界脳週間のイベントが企画されています.その一環として,次世代を担う高校生に脳の面白さを伝えるために講演会を企画いたしました.講演会は京都市堀川高校の普通科・探究科の特別授業として行われますが,他校の生徒,一般の方々の御来聴も歓迎します.また中学・高校の教員の皆様にも是非御来聴いただき,最新の知識を教育に生かして頂きたく存じます.

日時:   平成23年4月23日(土)13:30〜16:45

会場:   京都市立堀川高等学校 京都市中京区東堀川通錦小路上ル四坊堀川町622−

講演1:「言葉はなぜ生まれたのか 」岡ノ谷一夫 (東京大学大学院総合文化研究科教授)司会:篠本 滋 (京都大学大学院理学研究科准教授)

講演2:「歩き出すことも止めることもできない 」藤山文乃 (京都大学医学部准教授)司会:金子武嗣 (京都大学医学研究科教授)

主催:   NPO法人脳の世紀推進会議,文部科学省,厚生労働省,経済産業省 http://www.braincentury.org/brainsympo/index.html 

代表:   京都神経科学グループ 金子武嗣 京都大学医学研究科教授,篠本 滋 京都大学大学院理学研究科准教授

共催:   京都市立堀川高等学校        後援:   京都市教育委員会

 

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荒瀬校長「これからはいろんなことを解決していく力が必要である.この講演は簡単にわからないでしょうが,わかるところから理解していく取り組みが大事」というような趣旨の話でした.

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篠本による司会:「これまでの講演では大学の先生が中学を卒業したばかりの生徒を相手に学会発表のような話をするので大変ショックが大きかったが,今年は癒し系の岡ノ谷さんをおよびした.岡ノ谷さんは言葉の研究という本来は大変難しい話をソフトに研究される.これから本人を見てもらえばわかるように実に癒し系です」というような話をしました.

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岡ノ谷さん:動物好きだった岡ノ谷少年が文科系の学部に入って,それでも動物好きの心は変わらずアメリカに行き,理研,東京大学へと異動しながら理科系の研究に移っていく人生を語り,生徒たちはその語り口に引き込まれていきました.

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人間の言葉とはどういうものか.犬や猫の鳴き声,鳥の物まね,鯨の鳴き声,などと比べてどの点が同じでどの点が異なっているのかということを学術的に定義されていきました.結果,癒しの講演会とは違って,大学の講義という感じになりました.壇から降りていって聴衆の生徒に直接話しかけるという問いかけ形式の講義は新鮮で,みな真剣に聞き始めました.猫,犬,ジュウシマツの鳴き声ものまねがうまい.テナガザルの求愛の声の物まねは真に迫る物があって感銘.聴衆の生徒たちは,それをおもしろがると言うより,東大教授が柳家猫八顔負けの物まねをする有様に圧倒されて,完全に静まりかえってしまいました.

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講演の後は質問が相次ぎました.

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金子さんが藤山さんを紹介.「自分の研究室から人を選ぶことにためらいはありましたが,学術的に立派に活躍しているという人であるということ,これからは女性の時代であるということ,この2つの理由から藤山さんにお願いしました」という,金子さんにしては実にまじめな紹介でした.

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藤山さん:パーキンソン病患者の実話をもとに作られた映画「レナードの朝」のダイジェストをみせて,聴衆の注意を一気に引きつけました.この映画の局面を神経科学的に分析していくというながれで,基礎研究がどのようにこの病気に関与し,今後の可能な治療につながり得るのかというストーリーになっていました.「これは京大医学部の学生さんが試験前にもっているのと同じレベルの知識です」と宣言して大脳基底核のネットワークの図を説明.直接路,間接路の神経経路とその機能的意味という,ご自身の研究第一線の話を情熱的に話していかれました.生徒にとっては難しかったとは思いますが,藤山さんの真剣な講義にひかれてみなさん真剣に聞き入っていました.

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藤山さん:岡ノ谷さんの講演で始まった,壇から降りていって聴衆の生徒に直接話しかける問いかけ形式を,藤山さんも早速取り入れて,対話形式の講演会になりました.

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花束贈呈.高校1年生が自分たちで司会をして挨拶をする,という堀川高校の取り組みには毎回感銘します.