世界脳週間2009京都講演会 ようこそ脳科学の最先端へ
開催趣旨:脳科学は21世紀自然科学の柱の一つです.脳科学の重要性,脳研究のおもしろさを伝えるイベントが世界脳週間として全世界で行われます.日本の各地でも世界脳週間のイベントが企画されています.その一環として,次世代を担う高校生に脳の面白さを伝えるために講演会を企画いたしました.講演会は京都市堀川高校の普通科・探究科の特別授業として行われますが,他校の生徒,一般の方々の御来聴も歓迎します.また中学・高校の教員の皆様にも是非御来聴いただき,最新の知識を教育に生かして頂きたく存じます.
日時: 平成21年4月25日(土)13:30〜16:45
会場: 京都市立堀川高等学校 京都市中京区東堀川通錦小路上ル四坊堀川町622−2
「脳と心」 福山秀直(京都大学医学研究科教授)司会:篠本 滋 (京都大学大学院理学研究科准教授)
「氏か育ちか - 脳のできる仕組み -」
山本亘彦(大阪大学大学院生命機能研究科教授)司会:金子武嗣 (京都大学医学研究科教授)
主催: NPO法人脳の世紀推進会議,文部科学省,厚生労働省,経済産業省 http://www.braincentury.org/brainsympo/index.html
代表: 京都神経科学グループ 篠本 滋 京都大学大学院理学研究科准教授 外山敬介 京都府立医科大学名誉教授
共催: 京都市立堀川高等学校 後援: 京都市教育委員会
荒瀬校長「物事を鵜呑みにしない.何事も確かめよう」というような趣旨の話でした.このメッセージは図らずも福山さんの講演と符合しておりました.
篠本による司会:「世界脳週間京都講演会は十年近く堀川高校でやっており,この間に堀川高校の躍進があった.脳の話しを聞くと成績が向上する...大学の先生が中学を卒業したばかりの生徒にどれだけわかりやすく話せるかはチャレンジで,みなさんは先生がどれだけわかりやすく話しているかを採点するつもりできいてください」というような訳のわからない話をしました.
福山さん:「脳は騙される」というタイトルで,まずは「物事は疑ってかかろう」,「今日の常識は明日の非常識」というような教訓を話され,ご自身の研究を織り交ぜてヒトが錯覚するときの脳活動の様子を紹介されました.また,むかしアメリカの医師が自分の息子を兵役から逃れさせるために,兵役の検査で息子が分裂病と診断されるように騙す方法を教え,兵役から逃れることに成功させたという象徴的な例は皆の印象に残りました.
福山さんは極力わかりやすい説明を心がけておられましたが,時々本性が出てしまいます.福山:「『高次の脳機能』というのは『高次脳の機能』とは違います」;生徒「???」.福山:「『Functional MRI』は,『機能的MRI』という意味です」;生徒「???」.
講演の後はいい質問が相次ぎました.
金子さんが山本さんを紹介.「外山先生が別の会議のために出られないので代行します.山本先生は,(あの厳しい)外山先生のもとで8年間も勤められた.これは大変な記録です」というような紹介です.
山本さん:「京都大学も良いかもしれないが,大阪大学も良い」と,いきなり大阪大学のキャンペーンから始まりました.京都大学のスタッフたちは「やられた!」.脳のどこまでが遺伝的に決まっていて,どこから変えられるのか,ということについて,様々な実験例を見せながら議論を進めていかれました.生徒たちも興味津々で聞き入っていました.講演のあとには質問が相次ぎました.
山本さん:「これはむかし篠本先生のところにいたマイク・クレールというアメリカ人研究者.昔はぺーぺーのポスドクだったのが,アメリカに帰っていまではエール大学の准教授で,こんな豪邸にすんでいる.日本人の研究者はこういう豪邸には住めない」.篠本独白:「うーむ,完敗です」.
生徒:「なんで視覚野というのは後ろにあるんですか」.山本さん:「ええ質問ですやん.なんでかっていうと,,,ある特定の分子の勾配によって,後ろが後ろになってくるということはわかってきた.なら何でその分子が後ろに発現するかというのは,God only knowsですわ」という機転のきいた返事に聴衆は笑わされてしまいました.
講演者,司会者共に,堀川高校生の質問の目の付け所のよさ,質の高さには毎回感心させられております.挨拶も立派!