脳のセミナー

---------------------------------- 第54回 -----------------------------------

演者:松崎政紀氏 (基礎生物学研究所)

題名:随意運動中のマウス大脳運動野活動の時空間ダイナミクス<BR>

概要:大脳運動野での情報処理によって、様々な随意運動、行動が生み出されると考えられているが、この情報処理機構を理解するためには、個々の細胞の活動を計測するだけでなく、多数の細胞活動を同時計測するとともに、個々の細胞のシナプス入出力を同定し、さらに細胞活動を操作することが必要である。その第一歩として、我々は頭部固定マウスの前肢レバー引きオペラント学習課題を開発し、課題遂行中のマウス大脳前肢運動野において2光子カルシウムイメージングを行う系を構築した。その結果、第2/3層においてはレバー引き期間中によく活動するPull細胞群を見出し、Pull細胞はレバー運動をよく表現していることが、細胞活動からレバー運動を再構築することによってわかった。すべてのイメージング画面のうち約40%では、5個以上のPull細胞が70 μmのスケールの微小クラスターを形成しており、これらの細胞ではクラスター化していないPull細胞よりもレバー運動情報をより良く表現していた。クラスター内のPull細胞はレバー引き試行ごとに活動する割合、および同試行で活動する割合がクラスター外に比べて高いことから、この微小クラスターは強いシナプス結合サブネットワークを形成していることが示唆された。

日時:2013年6月4日(火)14:30-18:00

場所:京都大学医学研究科A棟1階A103室

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外山先生による紹介「松崎さんのことは全然しらないけれども(笑),河西さんがスパインの形態変化をtwo photonをつかって調べた研究は非常に良い研究でそのfirst authorだ」

松崎「密かにここに呼ばれることを目標に頑張ってきましたが,まだ準備不足で..」

恒例の「私の研究人生」.高校時代・大学時代に興味を持った本を紹介されました.東大理Tのわりには進化論や生物の本を愛読されており,人間とか脳の進化などに興味があったそうです.大学院修士課程はショウジョウバエの遺伝子研究.ほ乳類に興味が移り,博士課程では医学部河西さんの研究室に進学.そこで2光子顕微鏡を用いたスパイン形状変化の研究を開始,偉大な研究となりました.その後,ご自身の興味が神経回路活動の研究に移っていったそうです.

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松崎「マウスはバカだけど2光子イメージング実験に向いているんですね」

外山「マウスはラットよりバカですか?」

金子「マウスはじっとしていられないんですよね」

マウスのレバー引きタスクの装置作成の苦労談は面白い.そのころ院生たちは秋葉原に通ったそうです.

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微小クラスター細胞群が運動を予測しているということを実験検証.解析手法には工夫がほしいと思います.

篠本「運動予測に最大寄与する細胞群がクラスターしているという検証をすべきでしょう」

金子「たまには良いことを言う」

篠本「ぼくはいつも良いことを言っている」

金子「そんなことはない」

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アフターセミナー飲み会にはSさんが登場.Sさんはアフターセミナーではやや饒舌になります.

外山先生が話し続けて,松崎さんが一言もしゃべれらないのを見て,

Sさん「この会は,呼んだ人は無視して会話に盛り上がる,という失礼なところがあってすいません」

外山「そんなことはない.私は質問しているだけだ」

Sさん「外山先生には逆らえません」

外山「Sさんは脳のセミナーで1枚目だけで1時間かかったことから私にうらみがあるんだ」

Sさん「1時間かかったんではなくて,かけたんですね」

やはり結局松崎さんはあまりしゃべっていませんでした.