脳のセミナー

---------------------------------- 第53回 -----------------------------------

演者:藤澤茂義氏 (理化学研究所 脳科学総合研究センター)

題名:短期記憶中の前頭前野皮質、大脳基底核および海馬のニューロン群相互作用

概要:大脳新皮質の高度な認知機能は、どのような回路構造によりサポートされ、どのような演算によって遂行されているのでしょうか?この問題に取り組むため、私の研究では、高密度大規模細胞外記録法を用いて、短期記憶課題中のマウスの前頭前野皮質の局所回路からニューロン群(〜100個)の発火活動を網羅的に同時に記録し、それらのニューロン群の早い時間スケール(数ミリ秒)での相互作用を解析することで単シナプス結合を介した情報伝達を推定し、局所回路の微細構造と認知機能との関連を考えます。また、そのような局所回路内演算に加え、前頭前野皮質、大脳基底核、海馬などの広域領間でどのようなニューロン群の相互作用があるのかを調べる研究も行っており、その研究の過程で、大脳基底核回路の同期活動を支える脳波「4-Hzオシレーション」を新たに発見しましたので、それについても紹介したいと思います。

日時:2012年12月4日14:30-18:00

場所:京都大学医学研究科A棟1階A103室

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藤澤さんのNatNeurosci2008論文に感銘した篠本がめずらしく講師紹介.持っているのは論文.藤澤さんは高校時代に量子力学に興味を持って京大物理工学に入学.

物理工学は機械系が多く量子力学に関係している研究室を探して放射光をやっているエクテサビ・アリ先生という方についたそうです.

修士課程で神経変性疾患の脳の解析をした結果,生きた脳を研究したくなって池谷さんの一般啓蒙書を読んで東大薬学部の博士課程に入り,海馬CA1を研究.

その後米国ラトガース大学のBuzsaki研にてポスドクを7年やって今年の9月から理研のPI

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Buzsaki研では64チャンネルのシリコンプローブなど使って100個オーダーのニューロン活動を記録し,神経細胞間の結合の様子やその可塑性について研究を進められました.

臭いの手がかり刺激に応じて記憶行動をとるラットの前頭前野のニューロンを調べると海馬ニューロン同様に場所特異的に反応している.

篠本「place cellが,同じ位置でも状況によって反応が違っている..」

外山「goal dependentだ.「場所細胞」という見方をしたら場所細胞のように見えるという話しだ」

篠本「ははーん,なるほど...外山先生えらいですね!」

外山「今ごろわかったのか.おそい」

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cross correlation研究の歴史を知らなかった藤澤さんが(嚆矢の)外山先生の前で

藤澤「cross correlationの説明は良いですか?」

金子・篠本「...外山先生の前でcross correlationの説明はやらないほうがいい」

cross correlationから推定された回路とspike wave formから推定された興奮抑制の区別がconsistentであるという解析には

外山「実体から想像するよりもデータがきれいすぎる」

と言いつつも感心されておりました.

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後半は脳波の同期特性の解析.前頭前野ではpredictiveな行動条件で4Hz振動がmodulateされていてnon-predictiveな行動条件では活性化されない.

前頭前野,中脳VTA,海馬の同期特性が行動条件に応じてどう変わるか,という研究. functional connectionが振動位相に大きく依存するという結論に関しては,

外山「これまでの知識では説明できないことくらいは篠本君でもわかる.しかしこれは非常に面白い研究だ」

セミナーの最後には,それまで一言もしゃべらなかったSさんに質問してもらいました.

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休憩時でもアフターセミナーでも外山先生の篠本いびりが続いたので藤澤さんは食べるのも忘れて楽しんでおられました.