---------------------------------- 第51回 -----------------------------------

演者:藤山文乃氏 (同志社大学・脳科学研究科・神経回路形態部門)

題名:大脳基底核ネットワークを形態学的に解析する

日時:2012年6月26日14:30-18:00

概要:パーキンソン病やハンチントン病の病態の理解は、大脳基底核ネットワークを直接路・間接路のバランスとして捉えることで大きく進歩してきた。また、大脳基底核は随意運動の調節のみならず強化学習や報酬系などの高次機能にも深く関わっているということが報告されてきているものの、運動と学習、この両者を同時に実現するための神経回路は未だ見えていない。私たちは従来知られている大脳基底核スキームの中で見落とされているものを捜している道中であり、その一つの候補としてまず線条体の生化学的なコンパートメント構造を考え、このストリオソーム・マトリックス領域各々に関して入出力様式を明らかにした。またその解析の過程で、従来の直接路・間接路スキームの矛盾点を見いだし、大脳基底核経路には各々の核の違う領域を経由する二つのネットワークがあるのではないかという着想に至った。具体的には、大脳皮質?基底核?視床ループ(大ループ)の他に、共振が観察されている淡蒼球・視床下核を中心としたループ(小ループ)が存在する可能性を考え、その検証のための研究を始めたところである。また、レイヤーもカラム構造もない線条体の局所回路を探るための試みも始めている。本セミナーで先生がたのご意見を仰ぎ、今後の研究の糧にしたい。

参考文献

1. Fujiyama F, Sohn J, Nakano T, Furuta T, Nakamura KC, Matsuda W, *Kaneko T. Exclusive and common targets of neostriatofugal projections of rat striosome neurons: a single neuron-tracing study using a viral vector. Eur J Neurosci 33: 668-77, 2011. (evaluated by Kent Berridge, a Member of F1000; top 2% of published article in biology and medicine)

場所:京都大学医学研究科A棟1階A103室

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外山「藤山さんの紹介は誰がする? 金子さんは同業だから褒めづらいだろう」

篠本「褒めるんですか?」

外山「最初は褒めなきゃ().河野さんどうだ?」

ということで河野さんが指名されたのですが,意外と藤山さんの紹介はあっさり終わりました.

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恒例の私の研究人生:仕事とか恋愛には興味なく,サザエさんの母フネさんにあこがれて育つ.中学時代に脳性麻痺の人の手伝いボランティアに参加.理学療法士になりたいと思っていた.

ところが高校の進路指導で「女子には求職はありません」と宣告されて「整形外科医になろう」と思いたち,高校3年の夏から受験勉強して佐賀医大に入学.

佐賀医大に柴崎先生(後に京大医学部教授)がいて大脳基底核の講義を聴き「整形外科より,こっちじゃないか」と思い,神経内科専門医として歩き始めた.

大学院でシナプス伝達を確認したいと思い,2歳の双子を連れてオックスフォード大学Bolam博士の所に2年.そのあとテネシー大学のKitai教授のところに異動.

メンフィスでは泥棒に2回もはいられて「危ないなあ」とおもっていたところに,国際会議で京大の金子さんにあった縁で京大助手に.そのあと准教授,今年から同志社大教授.

藤山さんの人生はドラマです.双子の子どもを連れて転戦するのは尋常ではない能力だと思います.

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藤山「直接路は『やろうぜ』,間接路は『やめるのをやめるのをやめようぜ』とアクセルとブレーキのように...」

外山「基底核をアクセルとブレーキで説明するのは神経科学として全く意味がない」

金子「これ,医学生にはすごく受ける説明なんだけどねえ...」

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藤山「この経路の意味は『1人時間差で運動の精度を上げる』...」

外山「そういうたとえではなく,事実だけを言ってほしい」

外山「線条体は暗黒大陸といわれていた.強化学習という考えで少し明かりがともったかと思ったがそうではなかった」

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しかし線条体と淡蒼球外節の間にフィードバックループを見出した藤山さんたちの発見について外山先生は高く評価されており,

むしろ発見した事実に基づいてストーリーを組み立てることを勧めておられました.

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坪君は京都に用があって久しぶりに登場.Sさんも久しぶりに登場.

篠本「Sさん,コメントない?」

Sさん「ぼくは勉強しているだけだから質問はないですよ」

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アフターセミナーにて:

藤山さんが「アメリカにいた頃の年金に利子がついて増えているみたいなんですが,引き出し方がわからない」というのを聞いて,外山先生がアドバイス.

それを聞いて,アメリカで暮らしたことのある数人も「もしかして自分も年金があるかも...」と色めき立ちました.

もし年金を引き出せたらその10%を脳のセミナー基金として募金するべし,という話になりました.

 

次の講演者は誰が良いか,という議論で

金子「●●大学の■■さんはどう?」

Sさん「ぼくから(脳のセミナーに耐えてくれと)頼むわけにはいきません.つきあいがあるから...」