脳のセミナー
---------------------------------- 第46回 -----------------------------------
演者:久場博司氏(京都大学医学研究科)
題目:活動電位の発生部位における神経活動制御
日時:2011年5月17日(火) 14:30−18:00
場所:京都大学医学研究科C棟4階セミナー室
概要:神経回路機能が発現するしくみを理解する上では,その機能素子である個々の神経細胞の働きを理解することが重要である.特に,神経細胞の樹状突起や軸索では多様な情報処理が行われる.軸索起始部は,Naチャネルが高密度で分布することにより活動電位の発生に関わる.近年,我々は音の方向を特定することに関わるトリ脳幹の聴覚神経細胞において,軸索起始部の位置や長さが処理する音の周波数に応じて異なることを明らかにした.このことは軸索起始部の分布が,従来考えられてきたように画一的なものではなく,回路機能に応じて細胞毎に精巧に調節されていることを示している.セミナーでは,音源定位の神経回路機能が発現するしくみについて,軸索起始部の関与を中心に紹介するとともに,最近明らかにした軸索起始部での可塑的変化の機能意義についても議論したい.
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私の研究人生:九州大学医学部で脳と外科に興味を持って脳外科に入り,そのあと研究に興味を持って京大医学研究科,京大助手,オレゴン大学などを経て京大医学部准教授,と,淡々話されたのですが,外山先生がすかさず補足:「久場さんの父上は神経生理学者で,系譜的にはEcclesの孫弟子にあたる」ということを注釈されました・・・そういう背景もあったんだ.
音源定位:音の左右耳への到着時刻の差をDelay
lineを用いて神経細胞が検知するためにはサブミリセカンドの時間差を分離する必要があるという計算になりますが,過去に計測されたEPSPの時間幅は数ミリセカンドと広く,その不一致が謎でした.神経をembrioからchickに,環境を20度から40度に変えることでEPSPの半値幅が減少し,時間情報の検知が可能な領域に達したというのが前半のストーリー.
久場「NMでは小さなEPSPが足しあわされた結果,時間情報が正確に検知されます」
篠本「中心極限定理だな」
久場「・・・その通りです!」
これって数学教育に使えるようなすばらしい題材ですね.
久場「シナプス入力の変化が,軸索上のNa分布に影響しました」
篠本「へええ・・・これって学習ですかあ?」
外山「可塑性はあるが学習ではない.学習っていうのは成績が上がったときだけだ」
音源定位ということをとことん極めていく過程でもっと
generic な発見につながった.とてもすばらしい仕事だと思います.
アフターセミナーにても,相変わらずの盛り上がりでした.
河野「久場さんはなぜ大森研に入ったの?」
久場「電気生理をやるなら大森先生のところだ,コンピュータみたいな人だ,と言われまして」
皆「・・・なあるほど」
金子「■■さんは(外山先生のもとで)つらかったよなあ」
外山「私だってつらいことはいくらでもある」
篠本「・・・外山先生にどんなつらいことがあるのですかあ?」
外山「つらいことは人に言うことは出来ない」
皆「・・・」