「脳のセミナー」

---------------------------------- 第45回 -----------------------------------

演者:大木研一氏(九州大学医学研究院)

題目:大脳皮質の機能的神経回路の構築原理の解明に向けて

日時:2010年12月21日(火) 14:30−18:00

場所:京都大学医学研究科A棟1階セミナー室 A103室

概要: 大脳皮質は、外界から情報を受け取り、それを処理することによって、複雑な反応選択性を獲得しているが、実際にどのような神経回路によって、この情報処理がなされているかについては、依然として不明である。近年、イメージング技術の進歩(二光子励起法)により、生体から数千個の神経細胞の活動を同時に計測することが可能になった(Ohki et al., 2005, 2006)。他にも、神 経回路を調べる技術が続々と開発されており、神経科学の研究は変革期を迎えつつある。このセミナーでは、これら最新の手法を用いて、視覚野の神経回路が情報処理を行う上での基本構造とその発生のメカニズムを解明していくには、どうしたらいいのかについて、議論したい。

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外山先生がめずらしく「遠路はるばるありがとうございます」と丁寧に挨拶をされたのには皆驚きました.その後「大木さんは若すぎてよくわからない」と言いながらも実に詳しい紹介をされました.

「日本の神経科学で2光子レーザーを使いこなして成果を上げたのは2人だけで,その内の1人」との高い評価.もう一人は言うまでもなく東大の河西さん.

大木さんは東大医学部宮下研の出身.助手を務めた後,ハーバード大のKuffler, Hubel-Wieselがいた伝統のある研究室の一つClay Reidラボに留学.

そこで2光子レーザーカルシウムイメージングを使って視覚野の個々のニューロン反応選択性を可視化する研究に取り組まれました.

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外山「面白いことに,河西さんと大木さんは2光子レーザーの使い方が対照的.どこが対照的か,あとで(篠本に)質問するからね」

篠本「ううう」

河西さんの脳セミ(6年前),吉村さんの脳セミ(3年前)での議論と「宿題」を引用する外山先生の記憶力にはまいります.

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大木「ハーバードに行って,はじめ3ヶ月間実験がうまくいきませんでした」

篠本「これまでの人生で無駄は3ヶ月だけなの? 40歳近くまで苦労がないと,このさき挫折したら大変よ」

金子「嫉妬してるな

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2光子カルシウムイメージングで数百数千個ものニューロンの方位選択性反応を可視化し,ネズミの視覚野では方位円柱が無いことを証明するという見事な研究でヒット.

外山先生は大木さんの研究を絶賛されながらも

外山「こういうことは誰でも考えるはずだが,なぜ他の人はうまくいかなかったのか.成功の秘訣は何ですか?」

大木「うまくいかないと思って誰もやらなかったのです.Natureでは3reviewersもすべて好意的コメントをくれました」

篠本「うーむ.やっぱり苦労はしていないみたいね」

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篠本(大木さんにむかって)「生得説というのは,方位は学習しないと考えるですね?」

外山(大木さんにむかって)「あまり賛成しなくっていいですよ...篠本君の質問にハイって言ってはダメですよ」

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脳のセミナーは2時半から始まって30分の休憩をはさんで6時までみっちりやっても話がおわらないで苦労する,というのが常なのですが,今回は5時15分に終わるという最短記録達成.見事な講演でした.

外山「普通の人は論文の図を全部出すが,彼は半分も出さないで全部説明できる」