---------------------------------- 第44回 -----------------------------------

演者:村山正宜氏(理研BSI

題目:生体内での樹状突起活動

日時:2010年10月12日(火) 14:30−18:00

場所:京都大学医学部C棟4階セミナー室

概要:神経細胞の樹状突起は多数の細胞からの情報を受け、それらを統合している。樹状突起上での情報統合様式は、記憶の想起や注意などといった脳の高次機能も含めた動物の行動に関連して変化することが予測される。しかしこの仮説は未だ検証されていない。これは、行動中の動物に適用可能な樹状突起活動の記録法が存在しなかった為である。そこで私はこの状況を打開する為に、光ファイバを用いて自由行動中のラットの脳内における樹状突起活動を、光学的に記録する方法を開発した。この方法を用いて、生体内での皮質5層錐体細胞の樹状突起活動が特定の抑制性神経細胞によってコントロールされている事を明らかにした。覚醒時・麻酔時における樹状突起活動を比較検討した結果、動物の覚醒時における樹状突起活動が、麻酔時の活動に比べ顕著に活性化することを見出した。また私は、この樹状突起活動が前頭連合野からの入力によって賦活化される事を生理学的、解剖学的に解明した。さらに、覚醒時における樹状突起活動の強度は、動物運動の強度と正比例の関係にある事を見出した。これらの結果は、樹状突起活動は感覚情報の弁別や、思考、記憶の保持・消去や意思決定に強く関連している可能性を示す。

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村山さんは現在若干32歳で理研BSIチームリーダーをつとめる新進気鋭の研究者.金子さんの紹介のあと,恒例の「私の研究人生」.高校時代は普通科体育系にサッカー推薦で入学,予備校時代は新聞配達をするなど,いろんな苦労をしてこられたのち,東京薬科大学大学院を修了後,スイスベルン大学Larkum研究室に4年留学ののち理研BSIチームリーダーに抜擢.

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研究の勝負で勝ち残るために,奥さんから資金援助を受けて実験装置を買って実験をし,ベルン大学のポスドクに採用されたそうです.

Dendritic activity計測に決死の覚悟で臨み,血尿血便を体験するほどのハードな研究生活の後に日本に凱旋されました.

右の写真:左図はスイスに移ったばかりのころのタイムテーブル,右図は「競争相手が同じことをやっているらしい」という情報によって臨戦態勢になった後のタイムテーブル.

篠本「すばらしい! このスライド,写真に撮って研究室に飾ろう」

金子「どうせ自分ではそういう生活をするつもりはないんだろう」

篠本「院生にやってもらう」

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5層樹状突起の活動が感覚入力とどのように相関するか,覚醒と睡眠にどう相関するか,について答えを出すというのが村山さんの研究目標.そのためのCCDカメラ,染色,工学計測装置の開発が勝負所.マルチノッチ細胞の働きを確定するために様々なブロッキング手法を駆使されています.そのエネルギッシュな取り組みの姿勢には感銘しました.

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外山「ポピュレーションを計測するという方向は,個々の活動をすべて計測していこうという時代の方向性と逆行している」

村山「...これから話すところも,突っ込みどころ満載なんですが..」

篠本「現象はおもしろいんではないですか」

外山「原因はそれしかない,というところまで検証できるならいいんだけれど,詰められていない.私は疑い深い人間でね」

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アフターセミナーにて

外山「私も引き際は知っているからね」

皆「???」

外山「...世界脳週間とか,他の人(篠本,金子)に全部任せていってる」

篠本「ぼくもよく働いてきたから世界脳週間はぼちぼち引き際ですね.金子さんよろしく」

外山「私にいわせれば篠本の仕事量はalmost nothing.せいぜい better than nothing

 

そのあと, astonishing surprising のどちらがすごいのか,という問題で盛り上がりました.どう思います?

今回もSさんは多忙にてお休み.Sさん,ぼちぼち出てこないと忘れられるよ,というのが皆さんからのメッセージです.