脳のセミナー
---------------------------------- 第40回 -----------------------------------
演者:川口泰雄氏(自然科学研究機構・生理学研究所)
題目:「大脳皮質ニューロン多様性と局所回路」
概要:新皮質は多様な興奮性錐体細胞と抑制性介在ニューロンからできています。私たちはこれまで、GABA作働性細胞を発火様式・分子発現で、 錐体細胞を投射様式で分けてきました。一方、錐体細胞が作る興奮性サブネットワークの実体と、それらに対するGABA細胞による選択的抑制の仕組みはまだあまりよくわかっていません。そこで次の段階として、皮質出力に依存した結合モジュールにおけるニューロンサブタイプの役割を今後考えていきたいと思っています。
日時:2009年12月1日(火)14:30−18:00
場所: 京都大学医学研究科A棟1階セミナー室 A103室
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金子さんによる紹介「川口さんは神経細胞の生理学的かつ形態学的研究を進められて・・・」,に対して川口さんは「『形態学的かつ生理学的』です!」とコメント.
川口「私の研究人生を話せと言われて準備していて,もう退官してもいいような気になっちゃった」
東大医学部伊藤正男教授,外山敬介助教授,宮下保司助手の研究室の大学院生(きついスタートですね).伊藤先生から「すぐに終わるでしょ」と言われた小脳片葉が抑制する前庭動眼反射中継細胞のテーマで4年では学位をもらえなかったそうです.その後,生理研,テネシー大学,理研フロンティア,理研名古屋をへていま生理研.最初から「2種類を同定すると仕事になる」というスタンスで,ひたすら「2種類人生」を邁進された川口さん.研究の中身には恐るべき迫力があります.
川口「(Wilson and Kawaguchi,
1996) up stateが他のEPSP入力でできているか調べるためにspikeを止めて調べた」
外山「何で止めたの?」
川口「えーーーーと,薬!(笑)」
(あとで思い出されてQX314とのことでした)
川口「5層の錐体細胞を分類し,それらの間の結合をしらべた.3年かかった」
外山「何でそんなことやったの.私ならやらないよな」
川口「投射先に応じて分類した2群の錐体細胞群(CCSとCPn)にはCCS→CPnという階層性がある」
外山「これは偏りasymmetryであって階層性hierarchyではない.2種類に階層はない」
(このあと個人的会話にて「外山→篠本は,2つでも階層がある!」と言われましたが)
未発表の内容もあるので,ここでその詳細は書きませんが...
外山「それは何の証拠もない」
川口「証拠がないけどそう思っている(笑).この程度の実験でも大変なんですよ」
外山「大変な実験をやってるから大変なんだ.大変でないことをやればよい」
篠本「理論は大変じゃないよ」
外山「この人(篠本)は計算できないときには大変になっている」
川口さんの研究には(篠本も含め)理論家のファンが多く,岡田さんも東京から聞きに来ています.青柳さんは出席できないので院生にビデオを撮らせています.
休憩時間に「もう帰る!」などといっていた川口さんですが,最後には外山先生のコメントをうけて「来て良かった.これを作業仮説にしますよ」と満足顔でした.そのうち,川口さんの論文や講演にその作業仮説が現れるでしょう.お楽しみに.
アフターセミナーは相変わらずの盛り上がりです.
外山「M君は人をバカにするところがある.私はけなすことはあっても人をバカにはしない」
皆「...」