- 「脳のセミナー」
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- 第38回
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演者:中村加枝氏(関西医科大学)
題目:ドパミン・セロトニンと大脳基底核による報酬獲得行動の発現
概要:これまでに、報酬獲得行動におけるdopamine (DA)の線条体への投射の重要性が明らかにされてきた。すなわち、DA細胞は報酬で条件付けされた手がかり刺激や報酬に対してphasicに応答し、背側線条体を中心とした領域に報酬予測誤差信号を送り、シナプス可塑性を制御している。一方、DAと同じmonoamine系神経伝達物質であるserotonin(5HT)もDAとは異なる様式で報酬獲得行動に関与している可能性が指摘されてきた。5HTは脳幹部のraphe核群から分泌され、基底核では腹側線条体や黒質網様部に強い投射がある。しかも5HTはDAと直接に、または投射先で機能的に密接に関連して作用する。しかし、5HTがどのようなメカニズムで報酬獲得行動を制御しているのかほとんどわかっていない。現在私は眼球運動課題及び条件付け課題を行っているサルraphe核の単一神経細胞活動を記録し、5HTのDAとは異なる作用が明らかになってきたので、(preliminaryな段階ではあるが)報告したい。
日時:2009年7月14日(火)14:30−18:00
場所:京都大学医学研究科A棟103室
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恒例,私の研究人生:幼稚園では花屋さんになりたいと思っていたが,小学生になると研究者になりたいと思った中村さん.自分がなぜ自分と思えるのか,宇宙の端はあるのか,という疑問を抱き,一時期は物理を希望したが父上の説得を受けて医学部に進学.6年間は医者をやったが,その後生理研の大学院で彦坂さんの指導を受けて学位取得,米国のポスドク生活を10年,の後に日本に戻られたそうです.米国の良いところはmethods, persons, animals,
experiment and theory,
などのdiversityがあること,とのことです.
Dopamineはreward prediction と motivation のどちらをやっているのか.D1, D2 antagonistをあたえて報酬タスクへの反応latencyの変化をとらえる研究.
外山「working hypothesis を定義しないから話しが混乱する」
篠本「反応latencyが早まるときと遅くなるときの非対称性は,サルの気持ちで考えればよくわかる.式で書けないですか?」
外山「サルの気持ちを式で書けるものか」
藤山「D1, D2 両方止めたらどうなります?」
中村「もしかしてreviewerでしたか? Reviewerもそうきいてきました」
外山「報酬量とか変化させて,情報量を調べるとか,ちゃんと解析をしたらおもしろい結果が出るかもしれない」
篠本「あまり期待しないときに報酬がでたらニューロンは大きく反応している.幸せは給料の大きさでは測れない」
中村加枝さんはこの会がとても気に入られたようです.これからも参加してくださいね.
今回もSさんは忙しくて欠席.出席できない言い訳のメールを3通も篠本に送ってきました.Sさん,ぼちぼち出てこないと,思い出の人になってしまいますよ.
アフターセミナーはテニス談義で盛り上がりました:
外山「N氏のテニスは単純だ」
金子「外山先生も単純でしょう」
外山「複雑ではないが,駆け引きは考える.相手の弱点を見抜き,いやだと思わせる」
今日の外山名言「戦術にふさわしい戦略を考える」