脳のセミナー

- 第33回 ---------------------------------------------------

演者:永雄総一氏(理研脳センター

演題運動記憶形成維持メカニズム

日時20080513 14:30-18:00

場所:医学研究科C棟4階セミナー室

概要:私たちが日常用いている運動の技の大部は、練習を積み重ねることによって、脳が学習記憶したものを用いて行なわれています。子供の時に練習自転一度乗れるようになると、一生乗ることができるのがその典型例です。練習の繰り返しにより学習がおこり、運動記憶が脳の中に形成され、それがさらに長期記憶となって長期利用されるわけですが、その脳機構神経の大きなトピックであり、Marr-Ito-Albus小脳皮質神経回路シナプス伝達可塑長期抑圧)による運動仮説をめぐって、40年近く論争が行なわれてきました。この論争原因関連した運動記憶形成維持メカニズムについて、眼球反射適応パラダイムを用いた私の研究最近知見紹介します。

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外山先生による永雄さんの紹介:「伊藤先生の制御学習の研究では,良いところを宮下君がとって,永雄さんはその研究の苦情処理係で30年.今度の仕事がその仕上げになるか」

 

灘高→東大医学部という秀才コースを順風満帆にすすまれた永雄さんですが,東大医学部伊藤教室には外山助教授という苦難が待っていたようです.

恒例「私の研究人生」においては伊藤先生の学士院賞受賞記念の集合写真をみせた永雄さん:「狭い世界で,同じような先生たちの間をぐるぐる回っています.くされ縁は続く」

 

実験は基本的には「前庭動眼反射 Vestibulo-ocular reflex (VOR)」および「視機性眼球反応 Optokinetic Response (OKR)」におけるゲインの測定.

小脳片葉の活動をリドカインで遮断 (shutdown) したらshort term adaptationは消えるがlong term adaptationは消えない.小脳片葉から前庭核への記憶の転移 (transfer) が見られるというのが永雄さんの発見です.

 

Field potential の値とその時間微分が何に対応するか,の説明をまちがって答えた永雄さんに対して,外山先生すかさず「もういっぺん大学院やり直しだ」.

30年前もこうであったろうという激しい議論でした.セミナーの後,

外山「○君は『外山先生も昔に比べれば角が取れた』といっていた」

皆「・・・」

 

Sさんは「重要な用件」にて欠席でした.何か書かれるとまずいと思ったのか,篠本にはその用件の文書ファイルを添付して送ってきました.

アフターセミナーは,篠本が矢面に立たされることになったので,永雄さんは落ち着いてビールを飲んでおられました.

 

話題:テニスで木村先生に負けるようになった外山先生は一念発起してロビングを研究,1年がかりで完成し,最近返り咲いたそうです.

外山:「ATRKさんのテニスは,大脳を使っていない小脳テニスだ」