- 「脳のセミナー」 ---- 第29回 ---------------------------------------------------

演者:小松英彦(自然科学研究機構・生理学研究所)

演題:「大脳皮質における色情報処理」

日時:2006年10月24日(火)14:40−18:00

場所:京都大学基礎物理学研究所K206

要旨:このセミナーでは、大脳皮質における色情報の処理について私たちが行ってきた仕事、行いつつある研究について、その背景も含めてお話したいと思います。色情報の起源は網膜に存在する3種類の錐体です。異なる錐体の信号の比較が網膜で行われて色の情報が作り出され、大脳皮質に伝えられます。外側膝状体と大脳皮質一次視覚野(V1)で、ニューロンの色選択性を比較すると、大きな差が見られ、V1で色情報の重要な変換が行われ、色空間のさまざまな方向に選択性をもつ細胞が形成されることが分かりました。このような色の多軸表現は大脳視覚野における色表現の基本的な原理であると考えられます。

 V1から色情報はV2、V4を経て下側頭皮質に伝えられます。最終段階にあたる下側頭皮質前部の色選択ニューロンは、行っているタスクによって活動が大きく影響を受け、色をカテゴリー的に用いる時の方が細かく見分ける時に比べて活動が強いことが最近行った研究で分かりました。色を用いた行動の認知的制御には下側頭皮質の色選択ニューロンが関わっているのではないかと考えられます。

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まずは恒例「私の研究人生」から:学部では物理をやり,大学院では阪大基礎工に入った小松さん.1年上の川人光男さんをみて理論をやめたそうで「見切るというのは大事なことです」.

その後京大霊長研,米国NIH,電総研,生理学研.今は押しも押されもせぬ色覚研究の第一人者です.

 

物理学者のNewton, Young, Helmholtz, Maxwellの4人は,みな色覚研究をやっていたそうで「偉い人はみな色覚研究をしている」.ニュートンはプリズムで光を分解し,その赤色と緑をまぜて黄色を合成し,それが単色光の黄色とは異なることを見抜いたそうです.小松さんの色覚講義は系統だっていて大変良いレクチャーでした.

小松:「女性は4色性ではないかという説がある」

篠本+金子:「おー!」

外山:「色の世界だな」

 

外山:「nonlinearな加算というのはどういうことですか」

篠本:「linearでない,ということでしょう」

皆:「・・・」

 

篠本:「tuning特性が変わらずgainだけが変化するというのを確証するためには,カテゴリー化条件を変えた実験をやるべきですね」

金子+櫻井:「理論屋は気楽に言うなあ! 1年がかりの実験だぜー」

篠本:「Sさんはセミナー中に1回だけコメントしたね」

外山:「Sさんは休憩時間には良い発言をするね」

Sさん:「脳のセミナー中に発言できる隙を探すのはほとんど不可能です」