--- 第28回 --------------------------------------------------

演者:吉田和子氏(奈良先端科学技術大学)

題目:「不確実環境における意思決定の脳内モデル」

日時:2006年6月27日(火)14:40−18:00

場所:京都大学基礎物理学研究所K206

要旨:実環境から得られる情報はしばしば不完全で不正確である。不確実環境での意思決定は部分観測マルコフ決定過程(POMDP)として定式化され、不観測状態(隠れ状態)を「信念状態」として推定し、それを基に意思決定を行うことが有効である。我々は、POMDPを解くための主要な要素が前頭前野で実現されると提案し、隠れ状態の推定に関わる脳部位を明らかにするために、迷路探索課題を用いたfMRI実験を行った。本課題において、迷路上の現在位置は被験者にとって未知であり、観測と行動の履歴から推定する必要がある。しかし、被験者の信念、すなわち「今どこにいると推定しているか」を実験者が直接観測することはできない。このような逆問題を解くために、脳内情報処理過程を確率モデルとして定式化し、推定位置とそれに対する確信度を逐次的ベイズ法により推定した。我々のモデルは被験者の行動を非常に良く再現し、モデルによって推定された確信度の強さと前部前頭前野の活動度が相関することを明らかにした。

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外山先生が吉田和子さんを紹介:「娘の結婚式でスピーチする気分です」「3年ほど前に私のところに相談に来たときはどうしようもない研究でしたが(笑),・・・雑誌『Neuron』に載ったというのは,いきなりワールドカップに出るというような成功です」

部分観測マルコフ決定プロセスPartially-observable Markov decision process POMDP に見立てられるゴール探索問題をやらせて hidden current position の推定エントロピーを見積もるという研究.面白い設定だと思います.指導教官・共同研究者の石井さんも来て援護射撃.

 

モデルにパラメータがないのをみて金子さん:「どんなバカから始まっても最後にはかしこくなるというモデルなの?」

外山:「ゴール探索までの平均ステップ数が減少しているかどうか(学習効果が残っていないか),実験研究だったらはっきりさせる必要がある.理論だったらいいかげんでいいけどね」

  

セミナー終わって吉田さんは「・・・つかれた」とへたり込んでいましたが「・・・こんどはリベンジします!」となかなか根性があります.しかしどうこう言っても外山先生はこの研究がうまくいったことを大変喜んでおられます.

 

 

アフターセミナーでは吉田さんも外山節を笑って聞く余裕が戻ってきました.

 

外山:「普通なら最初の1枚のスライドで40分かかる.今回最初の2−3枚がススッといったのは,聞くに堪えないからだよ.例えばSさんは1枚目のスライドはいいが2枚目で■■■■」「データが(外山コメントで)すべて無駄になっちゃった,涙の4年間という感動物語の筋書きで話せばもっと良かった」

 

河野,金子:「外山先生は昔に比べれば丸くなった」

外山:「相手の立場を思いやるということはあるな」

皆:「・・・」

石井:「篠本先生,むかし厳しかったですよね」

篠本:「甘利,外山(という化け物たち)にがんがんやられて丸くなった」

石井:「サド,マゾのどちらも出来るんですね」

篠本:「・・・」

 

Sさんは今回欠席でしたが,アフターセミナーでのcitationは極めて多い:

外山:「今回のセミナーにSさんが居たらこういう質問したんではないか,・・・まあしかしSさんは質問しないか,」