脳のセミナー

--- 第25回 --------------------------------------------------

演者:福島菊郎氏(北海道大学大学院医学研究科)

題目:「視標追跡眼球運動の中枢機構」

日時:2005年10月11日(火)14:40−18:00

場所:京都大学湯川記念館(基礎物理学研究所)YH212

概要:両眼視機能を持つ霊長類は、種々の眼球運動システムを使い分けることにより、視力の最も良い中心窩を視覚対象に向け続ける。言い換えると、両眼の中心窩が投射する空間領域(中心窩対応領域)内に視覚対象を保持し続けることにより、正確な視覚情報を取り込む。そのためには、異なる眼球運動システムの統合が必要になる。視覚対象が身近の空間をゆっくり動く場合、前額面の追跡眼球運動である滑動性眼球運動(smooth pursuit)と、奥行き方向の輻輳運動 (vergence pursuit)が使われるが、いずれも、視標の運動の予測値により反応時間の遅れを補正し、眼球運動を継続することにより、3次元空間を動く視覚対象を中心窩対応領域内に保持しながら連続的に視覚情報を取り込む。さらに日常生活では多くの場合、他動的あるいはアクテイブな頭部の動きを伴って、これらの運動を空間内眼球(視線)運動として行うので、視標追跡眼球運動指令は、頭部運動指令信号あるいは頭部運動の結果としての前庭信号と統合され、統合された視線運動信号は、個々の運動成分に分解されて実際の視標追跡運動が行われることが推定される。私どもは、視標追跡運動を3次元性の眼球運動として捕らえ、視標運動の予測値の形成と視線運動信号の統合と分解という観点から、滑動性眼球運動に関わる脳内主要領域の信号を比較し、それぞれの領域がどのような役割分担を持つかを調べている。セミナーでは、これらの概略を、前頭眼野後部領域の信号を中心に説明する。

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恒例になりました「私の研究人生」.

福島:「好きなことなら続けることが出来ます」

 

対象を狭い中心窩foveaに補足し続ける追跡性眼球運動pursuitには予測制御が不可欠.その機構を明らかにすることが福島さんの研究課題.

福島:「見る夢に色が付いているんです,中心部分だけ.子供の頃にそれをいっても誰も信じてくれなかった」

 

3次元性追跡眼球運動がfrontal eye fieldでどのように表現されているか,を調べるために次々とアイデアを繰り出す福島さん.右目運動の振動周期と左目運動の振動周期を独立にとるように工夫した実験には篠本も感銘.

篠本:「これって特許とれませんかね.この運動についていけるかどうかで若さを判定するとか,.」

福島:「サルがターゲットを追っているかを片目だけで確認してrewardを与えていたら,片目だけ動かすようになってしまった」

外山:「敵もサルものだ」

 

追跡運動は奥行きと前額面成分両方が混じっているのに視覚入力は分離していると考えられる非常に意外で面白い結果.外山先生はこの研究をとても高く評価しています.でも,気に入らないところがあると「この実験で何を言いたいかだよね.実験をやってみてから解釈というのはあんまり,.」

篠本:「このスライドと前のスライドでは結果が違う.何が違うんですか?」

福島:「サルが違うのです」

篠本:「...」

外山:「このサルが悪い.ぼくなら次のサルを使う.」

皆:「......」

休憩時とアフターセミナーでは研究予算の話で話し込みました.精力的に論文を出して,natureのヒットもある福島さんですが,一時期は科研費もあたらず,そのことが原因で研究内容を変えたそうです.

篠本:「へええ,実験家にとって研究費は生命線なんですね」

金子:「理論家にとってアイデアは生命線でしょ.アイデア出なくなったらどうするの」

篠本:「うう,.」

 

演習の関係でセミナーに出られなかったSさんは,自分が話題にされることを過度に心配していました.しかしやはりアフターセミナーでは名前が出てしまった:

篠本:「しかし福島さんは元気だなあ.脳のセミナー,よく最後までもちましたね」

外山:「Sさんならダウンだな」