--- 「脳のセミナー」 ---

--- 第23回 --------------------------------------------------

演者:伊佐 正氏(自然科学研究機構・生理学研究所)

題目:上丘の局所神経回路とサッケード・注意について

日時:2005年5月24日(火)14:40−18:00

場所:京都大学基礎物理学研究所(K206

概要:サッケード運動は「注意」の行動における表出として、また近年では「decision making」の神経機構を調べる目的でも多くの研究の対象とされている。サッケードは広範な神経ネットワークによって制御されているが、上丘はその「鍵」となる構造である。私達は「上丘にそれ自身で何ができるのか?」を知ることが注意やdecision makingのメカニズムを追究していく上で必須であると考え、過去9年間にわたり、上丘の局所神経回路の構造と機能、さらにはneuromodulatorによる修飾機構についてスライス標本から麻酔下動物、また覚醒マウス、覚醒サルでの行動解析及び電気生理実験を組み合わせることで研究を積み重ねてきた。今回のセミナーでは、一連の研究で明らかになってきたこととともに、現在進行中の、上丘を含めた「膝状体外視覚系」の機能についての研究の展望についてもお話ししたい。

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外山先生による伊佐さんの紹介:外山「伊佐さんは,確か動物学科の出身で,,」伊佐「いえ医学部です」.外山先生は気がついていなかったようですが,東大では外山先生の講義を受けたということです.医学部の講義で数式がどんどん出てきたそうな.「フリークォーター」制度で研究にふれ,大学院でスウェーデン滞在,以後基礎研究一筋.

眼球サッケード運動には「普通regular saccade」のほかに「急行 express saccade」があるんだそうです.固視点を消してからしばらく間をおいてターゲットを示すと,間をおかない場合には見られない「急行サッケード」が時々起こるそうです.こんなことに気がついた人は偉いなあ! 各々のサッケードに対応する神経経路を明らかにするのが伊佐さんの研究目標.実験的証明のために,すさまじい数のハードルを超えていくタフな研究です.

 

伊佐「PPTN(脚橋被蓋核)にある神経細胞が反応していないときはサルがタスクに反応していない.つまり『やる気ニューロン』です」

篠本「へえ,大学院入試の代わりにそのPPTNの細胞数を計ればよいか,,」

 

V1切除しても他の神経経路のおかげでvisually guided saccadeができる.これはわからんではないがmemory guided saccadeができるというのは驚き.

 

大脳初期視覚野を失った患者は「盲視blind sight」ができるが,本人はうまくできているという実感がない,というよく知られた報告があります.そこでついつい言ってみたくなるのが「awareness」.この話を最後にもっていった伊佐さんはやはり読みが深い! このメンツの前で,そのスライドを最初にみせたら,蜂の巣をつついたようになったに違いありません.「awarenessというのを日本語にするとどういう言葉になります?」という金子さんの質問に対する伊佐さんの答えは『気づき』ということばでした.

 

今回訪問の伊佐さんも含めて,医学部出身の基礎研究者は医師免許を使わずじまい.アフターセミナー夕食会では医師の世界のおそろしい話で盛り上がりました,が,唐突に,

金子「・・・外山先生,もしかして医師免許持ってないんじゃないですか?」

外山「もっている!!!」

このお二人は,ともに医師免許を持っている.こわい世の中です.(伊佐さんも持っているそうですが,まだノーマルな感じです).

 

ところで:Sさんは多忙にて今回欠席.アフターセミナーにて外山先生曰く「Sさんは食べるときは(気が利いていて)よい.講演スライドは1枚目がよい.その先は■■■」.Sさん,欠席すると何を言われるかわからないから,これからは無理をしてでも出席した方がよいと思います.