--- 第19回 --------------------------------------------------

演者:高橋晋氏(京都大学文学研究科心理学教室)

題目:「独立成分分析を応用したマルチニューロン活動の解析」

日時:2004年7月27日(火)午後 2:30-6:00

場所:理学部物理教室(5号館)1階,第4講義室

 

概要:マルチニューロン活動記録法は、近接した多数ニューロンからの同時記録を目的とし、神経科学の強力な計測法として広く用いられている。最近ではBrain-Machine Interfaceの基盤技術として利用されている。マルチニューロン活動を取り込む場合、そのデータの中から単一ニューロン活動を分離・抽出するSpike Sortingと呼ばれる解析が重要である。この段階でデータの取り扱いを間違えると、その内に秘められた機能情報を的確に読み取ることができなくなるだけでなく、事実とは異なった結論を導く危険性をはらんでいる。ところが、既存のSpike Sorting手法は、発火の同時性により生じるスパイク波形のオーバーラップや、スパイク波形の変動などの問題に対処することができない。そのために、近接したニューロン間の詳細な相互作用、すなわち、1ミリ秒以内にニューロン間に作用している関係性を検出することは困難である。そこで、既存手法との比較を通して、独立成分分析(Independent Component Analysis;ICA)を用いたSpike Sorting手法(Takahashi et al. JNP,2003)が、近接したニューロン間の詳細な相互作用を検出するために有用であることを報告する。更に、新しく開発したマルチ電極と独立成分分析を組み合わせた手法を紹介し、ラットの海馬などから得られた結果について議論する。

 

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慶應義塾大学の安西研から修士課程は玉川大学の塚田・相原研に出向いて神経生理学実験に触れ,博士課程では京都大学櫻井研に出向いてマルチユニットレコーディングに触れて経験を積んだという高橋さん.

 

高橋さんは29歳だそうで,脳のセミナーの講演者として最年少です.「そんな若い人をあのセミナーで散らせて良いのか」などと危ぶむ声もありましたが,心配ご無用,堂々として大変立派な講演でした.

 

k-means clusteringにて前もってデータ群を分割,それにICAを応用してソーティング,その結果を再統合することによって,電極数より多い細胞のソーティングを可能としたというのが高橋さんの第1の研究の売り.ともかく,かなりタフなデータ処理をものともせずやっているところが偉い.

今回の外山先生は,高橋さんに質問する人間に対して攻撃を加え,高橋さんを徹底擁護.教育的配慮でしょうか.

 

第2の研究:サブミリセカンドの分離が出来た感じ.結果はじつにおもしろい.

篠本:「ギャップジャンクションは単なる抵抗だろうに結果は非対称で方向性があるというのはおかしい.工学部出身でこういう図を書くのに抵抗ないですか?」

高橋:「抵抗,ですね(笑)」

これはジョークだったようです.

 

金子さんの辛口のコメントにも外山先生は攻撃.後輩の島崎君もしっかり質問しています.

アフターセミナー夕食会:高橋さんがしばらく訪れていたニュージャージーは車を止めると撃たれるかもしれないという危険地域だったそうです.

ところで今回の研究関連では■■を■■するとか,いろいろおもしろい話題も出ました(櫻井さんからウェブに載せてはいけない,と口止めされたので伏せ字にしておきます).

また,タスクを学習しなかったサルのことが話題にあがりました.

外山先生はS氏に向かって「タスクをやらないからといってそのサルは馬鹿とは限らない」

また別のS氏に向かって「人にすり寄るサルがタスクを覚えるのであって,仲間内では評判が悪いサルに違いない」

さて上の2人のS氏とは各々誰でしょう?